氷川通信
祝詞~神様へ捧げる繁栄への祈り~
祝詞(のりと)は神事の際に、神職が神様に奏上する言葉のことです。抑揚があり、語尾をのばす独特の節回しが特徴となります。一般的に、神様に申し上げる言葉の「宣説言(のりときごと)」の省略といわれており、神様の日頃のご加護に感謝するとともに、個人の幸福、ひいては社会全体の安泰を願う内容となっております。
延長5年(927年)に成立した『延喜式(えんぎしき)』に収録されている祝詞が、現存する最古のものと伝えられています。
現在、神社では非常に多くの祝詞が奏上されております。その種類は、神社の年間祭典(祈年祭、例祭、新嘗祭など)のときに奏上されるものと、神事の度ごとにつくられ奏上されるものとに分けることができます。
年間祭典における祝詞は、おもに国家や地域社会などの繁栄を祈るものです。祝詞の冒頭から結びまでの表現が定型化されているところに特徴があります。一方、神事の度ごとにつくられる祝詞は、厄祓や初宮詣、神前結婚式、地鎮祭など主に個人の祈りに関わるものです。そのため、祈りに応じて神職がその都度祝詞を作成します。
また、文体によって「宣る(のる)」」で終わる宣命体(せんみょうたい)と、「白す(申す)」で終わる奏上体に分けられます。宣命体は祭場に集まった人々に聞かせるためのものであり、奏上体は直接神様に申し上げるものです。厄除など神様へのお願い事は、奏上体で行なわれるため、祝詞の多くはこの形をとります。
神社で祝詞が重視される背景には、言葉一つ一つに霊力が宿るとする「言霊信仰(ことだましんこう)」があります。古来日本では、祝福の言葉は良い結果を生じ、不幸や悪い言葉は、凶事をもたらすと考えられていました。
そのため祝詞では、社会の繁栄や五穀豊穣といった願意を、できるだけ良い言葉で申し上げています。